最初の報告は、地方の気象レーダーだった。

「上空に巨大な反射体。高度、不明。速度、ゼロ」

その数分後。
世界中の空に、同じものが現れた。

昼の青空。
そこに、ありえないほど巨大な月が浮かんでいた。

街の人々は立ち止まり、スマートフォンを空に向けた。
誰もが、理由もわからないまま記録していた。

だが、日本のある地下施設では、
まったく別の反応が起きていた。

「パターン解析、完了しました」

巨大スクリーンに映る白い球体。
その表面には、微細な幾何学模様が走っている。

「これは天体ではありません」

沈黙。

「人工物です」

司令席の男が、ゆっくりと言った。

「……識別コードを」

オペレーターが答える。

「既存データベースに一致なし」

少し間があって、彼女は続けた。

「ただし――」

スクリーンが拡大される。
月面に見える無数の点。

それは、クレーターではなかった。

レンズだ。
すべてが、地球に向けられている。

「観測装置……?」

誰かがつぶやいた。

そのとき、警報が鳴った。

「エネルギー反応、増大!」

月面中央に、黒い線が走る。
まるで殻が割れるように。

司令室が凍りつく。

やがて解析が出た。

「通信信号です」

ノイズだらけの波形が、
ゆっくりと文字列に変換されていく。

スクリーンに表示されたのは、
たった一行だった。

『観測段階、終了』

次の瞬間。

巨大な月の裏側から、
もうひとつの影が現れた。

それは、

月よりも大きかった。

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