休日の終わりは物悲しい。その静けさは胸の奥にゆるやかな重みを残し、まるで夕立の後に漂う湿った空気のように、微かな土と草の匂いを含みながら心の隙間へ染み込んでいく。それは明日へ踏み出す足をほんの少しだけためらわせる。寝返りを打つたび、薄いカーテン越しに街灯の光がかすかに揺れる。机の端には、まだ冷たさを残したコップが置かれている。すぐそばには読みかけの小説があり、そのページの端が、開け放たれた窓から入り込む真夏の夜風に小さく震えていた。時計は午前一時を指し、秒針が静かに時を刻む音が、部屋の中で淡く反響する。

スマホの通知はもう沈黙して久しい。昼間の笑い声や喧騒が嘘のように、アパートの廊下は足音ひとつ響かない。ただ、遠くの国道を走るトラックの低いエンジン音が、時折、微かに部屋を撫でて通り過ぎる。その音は、夢と現実の境界をそっと揺らす。

天井を見上げると、塗りムラの白が夜の闇に溶けていく。わずかな影が模様を描き、そこに言葉にならない虚しさが漂っているように思えた。光の反射が壁際に淡い輪郭を作り、静けさの中で形を変えて消えていく。週末のきらめきは、まるで氷砂糖のように、触れた瞬間に淡く溶け、甘い余韻だけを残して消えてしまう。

ふと立ち上がり、窓際へ。外では、隣家の庭先に吊るされたガラスの風鈴が、湿った夏の空気に揺れて小さく鳴った。その音色に導かれるように視線を上げると、満月の光が雲間からこぼれ、濡れたアスファルトに銀色の筋を描いていた。遠くの屋根や街路樹も光を浴び、深夜の町並みが一瞬だけ息をひそめて輝く。その輝きは、夜がひと呼吸だけ美しくなるのを許したかのようだった。

指先で窓枠をなぞりながら、もう少しだけ起きていたくなる衝動を押し殺す。朝は必ず来るし、仕事も始まる。それなのに、この深夜の澄んだ時間は、どうしてこんなにも名残惜しいのだろう。

背中を夜風の涼しさに押されるようにベッドへ戻ると、部屋の空気は少しだけ温もりを取り戻していた。瞼を閉じても、風鈴の音と月の光がまだ胸の奥で響き、香り立つ夜気と頬を撫でる涼しさとが溶け合っている。休日はもう遠くへ行ってしまったのに、その残り香と音と光だけが、静かに眠りへと誘っていた。


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