大アクサンのヌーカ王15年 春
ベンビスティーの荒涼とした大地は、夜明け前の静寂に包まれていた。不毛の地であり、野戦には適した場所だが、その冷たさと静けさが戦の激しさを予感させていた。
アクサン人の将、プローサ隊長はリジニア教の法度に従って精霊に祈りを捧げ、水瓶の静かな水面に心を集中させていた。
後ろでは兵たちが準備を進めていたが、彼の前には神聖な時間が流れていた。水面に微かな波紋が広がるのを見て、彼は為すべきことの予徴を得る。戦いの準備を整え、軍を指揮する決意を固めた。
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戦の幕開け
夜が明け、両軍が対峙する。アクサン軍はプローサの指揮のもと、慎重に前進を開始し、
フラール軍はバルアーン候トッテと息子ペロールの指揮の下で応戦した。戦況は均衡しており、両軍の戦士たちは激しい交戦を繰り広げた。
拮抗した戦況の中、アクサンの遊撃速射兵による弾幕を浴びせられたトッテの部隊は壊走し、プローサの兵に包囲されてしまう。ペロールは父を救おうと勇敢に襲いかかるが、プローサの親衛隊に囲まれて孤立してしまう。フラール軍は五分の戦いを続けていたが、主将を失ったことで、兵をまとめて退かざるを得なくなった。
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異常な結末
通常の貴族同士の戦争では捕らえられた将は後日交渉材料として扱われるはずだった。
しかし、トッテとペロールは併せて斬られるという異常な事態が発生する。
これはバルアン候とアクサンとの間でかねてより結ばれていた何らかの密約が果たされず、トッテがやむを得ず挙兵した背景があったことを暗示している。
プローサは、これが精霊の示した為すべきことであると考え、この親子を斬った。
ベンビスティーは再び静寂に包まれたが、その静けさは戦の傷跡とともに残り、フラール軍に大きな影響を与えた。プローサは勝利を収めたものの、この異常な戦いの結末がもたらす影響を内心で感じ取っていた。
続き
バルアーンの魔女 ベンビスティーの戦い②
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