秘密のベレー帽

使用したAI Stable Diffusion
紫峰怜花は、ずっと気になっていた。
狭霧華蓮がいつも頭にのせている、あのベレー帽。授業中も、帰り道も、文化祭の準備中でさえ外さない。

ある日の放課後、勇気を出して聞いてみる。
「ねえ華蓮さん、そのベレー帽……どうしていつもかぶってるの?」

すると彼女は、ほんの少しだけ考える素振りをしてから、淡々と答えた。
「秘密です」

怜花は苦笑する。
「それ、秘密って言えば済む便利な答え方でしょ」

「便利であり、かつ有効です」
すました顔で言う華蓮に、怜花は吹き出してしまう。

しかし、数日後。図書室でふたりきりになったとき、華蓮は不意に声を落とした。
「先生。少しだけ、秘密を共有してもいいですか」

「えっ、なに?」
怜花が目を瞬かせると、華蓮はゆっくりベレー帽を外した。そこには、小さな布の内ポケットが縫い付けられていて――中には折りたたんだ短いメモ用紙が何枚も入っていた。

「……これ、何?」

「考えごとをしたときに浮かんだ言葉を、すぐに書いてしまうのです。忘れないように。だから、この帽子は、私の小さな“思考の隠れ家”」

怜花はしばらく黙って見つめ、やがて柔らかく笑った。
「なるほどね。だから、いつもかぶってたんだ」

「秘密にしていたのは……少し照れくさかったからです」

帽子を抱える華蓮の横顔は、いつもよりほんのり赤い。
怜花は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じて、小さく頷いた。

「ありがとう、打ち明けてくれて。秘密って、ひとりで抱えるより誰かと分け合った方が、軽くて楽しいんだよ」

華蓮は少しだけ笑って、そっとベレー帽をかぶり直した。
「では先生、この秘密は……ここだけのものに」

「もちろん。ふたりだけの秘密ね」

窓の外、夕陽に照らされた図書室で、二人の笑い声が静かに重なった。

呪文

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