ボスの妹

投稿企画「集まれバッドガール」参加用作品です。
一、二枚目がi2iでSDXL生成した完成画像、三、四枚目が素地としてDIRTで生成した
オリジナル画像。
DIRT→i2i(SDXL)手順です。

【 ボスの妹 】
かつて、この広大な城館は権力と金の象徴だった。今や壁は剥がれ落ち、天井は崩れかけ、
風の音さえ悲鳴のように響く。そんな廃墟の一室に彼女リサはいた。

「兄貴なら今は出かけてるよ」

荒れ果てた部屋には、およそ不釣り合いな真新しいベッドへ、ふんぞり返るように
腰を降ろした彼女はぶっきらぼうに言い放った。

「あのクソ虫共は片づけたのかい？」

組織の若い構成員、タクミは部屋の中央で一礼しながら報告した。

「はい、後処理も抜かりなく」
「そうかい、随分と手際が良くなったもんだ」

リサは唇の端を上げて笑うと、挑発的な視線で彼を見た。

「あたしはね、予てからあんたの度胸が据わったとこ買ってるんだ。
なんなら兄貴に言って幹部へ推してやってもいいんだよ」

彼女は態度を豹変させると、スパイクチョーカーに指をかけながら艶やかな声で
ささやいた。

「まだ時間あるんだろ？、少しゆっくりしておいきよ」

タクミはわずかに視線を逸らし一瞬逡巡の後、決意を宿らせた声で答えた。

「じゃボスに伝えといて下さい、まだ俺片付ける事があるんで」

ドアがバタンと閉まるや否や、グラスが叩きつけられ派手に砕け散った。

「……なんなんだよ、あのチキン野郎！女に恥かかせやがって」

怒りと期待の裏切られた悔しさ。

「……人の気も知らないで……」

最後は消え入りそうな声でつぶやくと、リサはベッドに泣き伏すのだった。
静寂だけが部屋を満たしていた。
背後の壁に飾られた、かつて家族で撮った古い写真─　唯一、壊れずに残っている
思い出だけが、彼女の弱さをそっと照らしていた。