食彩探訪・一月号特集
肉じゃが定食

――基準点は、派手ではないところにある

 肉じゃがという料理に、私はいつも少し身構えてしまう。
 理由は簡単で、誰もが知っているからだ。

 運ばれてきた器から立ち上る香りは、甘さより先に出汁を感じさせる。
 砂糖で押し切るタイプではないことが、ここで分かる。

 まずはじゃがいもに箸を入れる。
 表面は崩れず、中はほくりとほどける。
 煮崩れさせないために、どこで火を緩めたのかが想像できる仕上がりだ。

 肉は前に出すぎない。
 主役はあくまでじゃがいもで、肉は旨味を添える役に徹している。
 玉ねぎの甘みが煮汁に溶け込み、全体を丸くまとめているのが心地よい。

 白ごはんと交互に運ぶと、この定食の狙いがはっきりする。
 煮汁をごはんにかける必要はない。
 一口ずつ往復することで、甘辛さが過不足なく収まる。

 添えられた青菜や冷奴が、味の流れを整えてくれる。
 食べ進めても疲れず、最後まで同じ速度で箸が進む。

 肉じゃが定食は、驚かせない。
 だが、外さない。
 その「当たり前」を守ることが、どれほど難しいかを、この一膳は静かに語っている。

■ 締めの一文(編集後記的まとめ)

 家庭料理は、基準を崩さない勇気でできている。
 肉じゃがは、そのことを一番分かりやすく教えてくれる。

■ 次回予告(1/22掲載予定)

 次回の食彩探訪は、
 「アジフライ定食 ― 揚げ物の良心」。

 衣の軽さ、油切れ、身の厚み。
 シンプルだからこそ、誤魔化しは効かない。

 次回もまた、定食屋の実力を確かめに行きたい。

呪文

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