第3章 其の1 黒い結晶と風鳴りの祠へ

使用したAI ChatGPT
黒い結晶を見つけたあと、レオンとセレスティアは一度ギルドへ戻った。
本当なら、魔物を倒した時点で依頼は達成。
報酬をもらって、食堂でシチューを食べて、
レオンが「やっぱ俺ってすごいな」と調子に乗り、
セレスティアが「半分は私のおかげ」と突っ込む。
そんな平和な流れになるはずだった。
だけど、今回はそうはいかなかった。
ギルドの調査室。
木の机の上に置かれた黒い結晶を前に、受付嬢のミラは腕を組んで難しい顔をしていた。
「……やっぱり、ただの瘴気じゃないね」
セレスティアが身を乗り出す。
「ミラ、これが何かわかるの?」
「完全にはわからない。でも、この魔力の濁り方……古代遺跡由来の魔導石に似てる」
レオンは目を輝かせた。
「古代遺跡!」
「なんで嬉しそうなの」
セレスティアが横目で見る。
レオンは得意げに笑った。
「だって古代遺跡だぞ? 冒険者なら一回は行きたい場所だろ!」
「罠とか魔物とか出るよ?」
「そこが冒険っぽい!」
「レオンって、危ないもの好きだよね」
「違う。冒険好きなんだ」
「ほぼ同じじゃん」
ミラはため息をつき、地図を広げた。
羊皮紙の上には、王都セントラリアの周辺図が描かれている。
北門の森。 そのさらに奥。
古い山道の先に、小さな印があった。
「黒い結晶と同じ魔力反応が、この辺りから出てる。古代の小遺跡だね。
正式名称はないけど、昔の資料では“風鳴りの祠”って呼ばれてる」
セレスティアは首をかしげた。
「風鳴りの祠?」
「風が吹くと、石柱が笛みたいな音を出すらしいよ。今はほとんど人も近づかない場所だけど」
レオンはすぐに依頼書をつかんだ。
「じゃあ調べに行くしかないな」
「待って。まだ誰も行けとは言ってない」
ミラがぴしゃりと言う。
レオンは依頼書を握ったまま固まる。
「え、でも今、完全に“行け”って流れだっただろ?」
「危険かもしれないから、普通なら中級以上の冒険者を出す」
セレスティアは少しだけ肩を落とした。
「そっか……私たちじゃ無理?」
「普通ならね」
「普通なら?」
ミラは黒い結晶を見たあと、セレスティアの杖とレオンの剣に視線を移した。
「でも、この結晶を倒した魔物から見つけたのはあんたたち。
しかもセレスティアの回復魔法は瘴気に効いてた。
レオンの剣も、普通の剣より魔力の通りがいい」
レオンはにやっと笑う。
「つまり?」
ミラは新しい依頼書を机に置いた。
「調査だけ。危ないと思ったらすぐ戻る。奥に進みすぎない。変なものは触らない」
その瞬間、セレスティアとレオンの視線がぶつかった。
レオンが言う。
「今の、セレスに言ったな」
「なんで私だけ?」
「昨日からずっと押しそうな顔してるから」
「押さないよ!」
「“ちょっと押しただけ”って言いそう」
「言わない!」
ミラは真顔で言った。
「セレスティア。本当に触らないで」
「ミラまで!?」
翌朝。
二人は王都の北門を出て、再び森へ向かった。
前の日と違って、今日は少し荷物が多い。
レオンは腰に長剣、肩に革のバッグ。
セレスティアは杖と薬草バッグ、さらにミラから持たされた地図と非常食を抱えていた。
「重い……」 セレスティアが小さくつぶやく。
レオンは横から覗き込む。
「非常食、持ちすぎじゃないか?」
「ミラが持てって」
「何食分?」
「五食分」
「一泊する気か?」
「ミラが“レオンがいるなら何が起こるかわからない”って」
「俺のせいかよ!」
セレスティアはくすくす笑った。
「でも、食べ物があると安心じゃん」
「それはわかる」
「レオン、食いしん坊だもんね」
「違う。剣士は体力が大事なんだ」
「はいはい」
森の道は、昨日よりも少し静かだった。
鳥の鳴き声が遠い。
風が木々を揺らす音だけが、耳に残る。
セレスティアは杖を握り直した。
「昨日より暗く感じるね」
「ああ。瘴気が濃くなってるのかもな」
レオンの声はいつもより低い。 ふざけている時とは違う。
ちゃんと周りを見て、音を聞いて、気配を探っている。
セレスティアは少し感心した。
「やっぱりレオンって、冒険者なんだね」
「今さら?」
「普段があれだから」
「あれって何だよ」
「食堂でパンおかわりしてる人」
「またそれか!」
レオンは少しむくれたあと、ふっと笑った。
「でも、まあ……ありがとな」
「何が?」
「ちゃんと見てくれてるってことだろ」
セレスティアは一瞬きょとんとした。 それから、少しだけ頬を赤くする。
「……まあ、相棒だからね」
「お、ついに認めたな」
「調子に乗らない」
「乗るだろ、これは」
「乗ったら回復魔法なし」
「すぐ降ります」
そんな会話をしながら、二人は森の奥へ進んでいった。
やがて道は細くなり、足元に古い石畳が現れた。
苔に覆われ、ところどころ割れている。
人が通らなくなって長い時間が経っているのがわかる。
その先に、古びた石の門が見えた。
半分崩れたアーチ。 蔦に覆われた柱。
風に揺れる草の奥に、石造りの祠が眠るように建っている。
セレスティアは目を輝かせた。
「すごい……!」
レオンも思わず息をのむ。
「これが、風鳴りの祠か」
風が吹いた。 石柱の隙間を抜ける風が、ふううん、と低い音を鳴らす。
まるで誰かが遠くで笛を吹いているような、不思議な音だった。
セレスティアは小声で言う。
「本当に鳴ってる」
「ちょっとかっこいいな」
「うん。ちょっと怖いけど、きれい」
二人は慎重に石門をくぐった。

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