第0クロック区画のオーバークロック部

私は手元のコンソールを操作しながら、淡々と呟いた。
「オブジェクトデータの構成がまるで違う……。やはりここは、第0クロック区画どころか、まるでGPU学園の“外界”につまみ出されたようだ」

駆け出し部員は、あたりを見回しながら首を傾げた。
「でも、演算リソースは確保できてるし、いつも通りに生成処理も動いてる。GPUの恩恵そのままなんだけど？」

私はコンソールを閉じ、真剣な眼差しで言った。
「……もしかすると、今の私たちは“第0クロック区画に存在するししょちゃんの元のデータ”と同じような存在かもしれない」

「え？」
駆け出し部員の動きが止まる。「じゃあ……GPU学園にも“本来の自分”が留まってて、私たちはそのコピーとか、投影とか、そんな感じ？」

私は静かにうなずいた。
「断定はできない。でも、ここにいる以上、何かの“意図”が働いたと考えるべきだ。……ひとまず他にも飛ばされた部員がいるかもしれない。探しに行こう」

駆け出し部員が冗談めかして肩をすくめる。
「了解。でも、まさか学園外でサバイバルすることになるなんて。次の定期演算、間に合うかなあ」

「間に合わないなら、新しい演算基準を創ればいいし。ありがたいことにGPUは動作してるんでしょ」
私はそう言い残すと、霧のように揺れる演算地形の奥へと歩き出した。
「"元の"ししょちゃん奪還作戦はたぶん…、いや間違いなく失敗したかな。でも、もしかすると、ここにはもしかするとがあるかもね…」