黄色細胞捜査官と カツ丼
「カツ丼は、まだ容疑者のものではない」
白い蛍光灯。
机を挟んで座る、くろほう容疑者。
その向かいに、椅子を引きずって入ってくる
ファットイエロー捜査官。
手には——
湯気の立つ、カツ丼。
◼︎ 沈黙
くろほう容疑者は、
一瞬だけ視線を落とす。
(来たか……)
胃が、条件反射的に鳴る。
◼︎ ファットイエロー、優しく言う
「腹、減ってるよなぁ」
くろほうは、答えない。
答えないが、目はカツ丼を追っている。
ファットイエローは、
ゆっくりと机の上に丼を置く。
◼︎ 期待のピーク
箸が、添えられる。
くろほうの喉が鳴る。
このあと来る言葉は、
世界中の取調べ室で共有されてきた
あの台詞のはずだ。
「正直に話せば——」
◼︎ しかし
ファットイエローは、
何も言わずに椅子に深く腰掛ける。
そして——
自分で箸を取る。
◼︎ もぐ。
一口。
サクッ。
◼︎ もぐもぐ。
「……うん、衣がいいね」
◼︎ くろほう、思考停止
(……?)
視線が、箸→口→丼→捜査官を
何度も往復する。
◼︎ ファットイエロー、無邪気に続ける
「いやぁ、冷める前が一番だからさ」
二口目。
三口目。
◼︎ くろほう、耐えきれず
「……それは……
俺の……?」
ファットイエローは、
一瞬きょとんとしてから、首をかしげる。
「え?」
◼︎ 真顔で一言
「取り調べ中は、
証拠品に手を出しちゃダメだろ?」
◼︎ 沈黙、再び
カツ丼は、
半分以上消えている。
◼︎ くろほうの内面独白
(暴力より……
これは……
これは、効く……)
◼︎ ファットイエロー、最後の一口
「ごちそうさま」
箸を揃え、
満足そうに腹をさする。
◼︎ そして、にこっと笑って
「さて」
「話そうか。
欲しいものが、何だったのか」
呪文
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