「……ねえ。さっきから黙って私を見て、どうかしたの?」

和服に身を包んだ小夜(さよ)が、一輪の椿を手に持って、しおらしく首をかしげた。背景には桜が舞い、その姿はまるで一幅の絵画のように完璧だ。

「いや、あまりに綺麗で見惚れてたんだ。まさに『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』って感じだね」

「あら、嬉しい。でも今は椿を持っているから『持てば椿』かしら?」

小夜はうっすらと頬を染め、僕をじっと見つめてくる。その瞳には、何かを期待するような、熱い視線が混じっていた。

「それで……続きは?」

「えっ、続き?」

「ほら、何か忘れてない? この完璧なシチュエーション。花も、着物も、私の……その、仕上がりも」

「ああ! ごめん、忘れてた!」

僕は慌てて、背中に隠していた「それ」を差し出した。小夜の目が、椿よりも赤く輝く。

「そう、これよ! 花より団子、私にはこのみたらし団子が必要なの!」

「……小夜、一応確認だけど。さっきの熱い視線は、僕に対してじゃなくて、この団子のタレに対してだった?」

「半分正解。正確には、タレが垂れそうな絶妙な焼き加減の団子と、それを持ってきてくれた君に対して、よ」

小夜は優雅な手つきで団子を受け取ると、着物の袖を汚さないよう器用に口に運んだ。

「んんっ! 美味しい……。ねえ、もう一本ある?」

「あるけど……。小夜、その、髪飾りの立派な椿が団子のタレで汚れそうだよ」

「大丈夫、これは気合で避けるから! それより、早く次の団子を献上しなさい。この『椿の妖精風コスプレ』を維持するの、結構お腹が空くんだから!」

美しさの維持には、どうやら相当な糖分が必要なようだった。

呪文

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