【マタタビ】前日譚②:いざ、ニューナゴヤへ

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(前の話)
【マタタビ】前日譚①:星の樹の噂話
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 シロが出発の準備をしている間に、俺は脳内のデータストレージから、ニューナゴヤに関するデータを抽出する。

 西暦2080年、人類文明は科学技術の発展により黄金時代を迎えた。世界中に大都市が築かれ、生存圏は星の外にまで広がり、人間と遜色ない思考や行動が可能なアンドロイドが生まれ、医学の発展により人類は老いすら克服していた。ニューナゴヤとは、そんな文明の絶頂期に、極東の島国、日本に存在していた大都市のひとつである。
 
 しかし、2084年7月、地球上で様々な異常現象が同時多発的に発生し、ほんの数ヶ月間で文明は終焉を迎えた。“終末事変”と後に呼ばれるこの事件の原因や詳細については、未だ明らかになっていない。そして、終末事変の影響の残滓か、あるいは混乱の中で用いられた気象兵器の後遺症か、地球全土は穏やかな初夏の気候に覆われた。
 
 俺とシロは、そんな世界を旅する旅人だ。この世界の旅には、危険がつきものだ。俺たち旅人にとって、その危険をなるべく避けるためにも、事前情報の確認は重要である。
 
 ニューナゴヤは終末事変後の復興も進んでおり、かなり栄えている街だ。各地方には、いくつかの主要なエリアがある。情報が集まる「ニューオオス」、食料物資が豊富な「フラットランド」、拠点構築に最適な「ニューナゴヤドーム」、エネルギー確保に必須な「ニューカナヤマ」。

 最初にどのエリアに向かうか悩むところだが、やはり根も葉もない噂話を追うには、情報が必要だろう。俺はそう考え、情報が集まる「ニューオオス」を目指すことにした。ここからだと、最寄りのジャンプポータルを使えば、数時間で行ける場所だ。情報の確認を終え、シロの様子を見ると、出発の準備を終えていた。

「しっかりと武装もできているな」
「うん」

 そう言ってシロは、両腕のガントレットを俺に見せる。腕に装着する防具だが、ただの防具ではない。俺たちが文明の痕跡から発掘した“奇跡の残響”と呼ばれる代物だ。文明崩壊前の科学技術で作られたもので、再現不可能なそれらの遺物が持つ力は、まさに奇跡と呼べる。シロのガントレットも、通常は、義手程度の大きさだが、装着者の思考で大きさを変えることができる。シロには、この世界で生き残るために、基本的な戦い方を教え込んである。ある程度のトラブルに巻き込まれても、なんとかなるだろう。

 俺とシロは、テントの外に出て空を見上げ、太陽の眩しさに目を細めた。空には、雲一つない青空が広がっている。俺は、シロがテントを収納し、リュックサックに詰め終わるのを待った。ただでさえ大きなリュックサックがパンパンになったが、シロは、それを軽々と背負う。

「よし、じゃあ出発するぞ」

 俺とシロは、噂話の舞台となるニューナゴヤに向かって歩き出した。これから巻き込まれる厄災のことなど、つゆとも知らずに——。

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(次の話)
【マタタビ】1.ニューオオスの街並み
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