治水の智将・武田信玄

武田信玄――戦国の世を駆け抜けた甲斐の虎は、戦場だけの英雄ではなかった。彼が命じた「信玄堤」は、数百年を経た今なお、川の氾濫を防ぎ、人々の暮らしを守り続けている。
永禄年間、甲斐の国。 信玄は、戦の合間にも領国経営に心を砕いていた。特に、暴れ川として知られる釜無川と御勅使川の合流地点は、たびたび氾濫し、田畑や村を飲み込んでいた。領民を守るためには、戦に勝つだけでなく、生活の基盤を整えねばならない。信玄は軍略と同じく、土木にも深い関心を寄せ、川の流れを読み、堤防を築く計画を立てた。
この日、彼は自ら工事現場に足を運び、工夫たちと共に土を踏みしめる。「人の世を治めるは、戦ばかりにあらず」 そう呟きながら、彼は軍配をかざし、川の流れと堤の形を見極める。石や木を組み合わせ、流れを制御する「霞堤（かすみてい）」の構造を採用し、川の力を分散させる知恵を施す。工夫たちは汗を流し、武田の旗の下、一丸となって働いていた。
この堤は、ただの土木工事ではない。 それは信玄の「民こそ国の礎」という信念が形になったものだった。戦国時代、他の大名たちは領土を広げることに躍起だったが、信玄は領民の暮らしを守ることにも心を砕いた。軍事、政治、経済、そして治水――そのすべてを支配することこそが、真の戦国大名の姿だと、彼は信じていたのだ。
やがて、信玄の死後も「信玄堤」は生き続けた。江戸時代には幕府の治水技術にも影響を与え、現代に至るまで幾度となく改修されながら、その役目を果たし続けている。信玄が夢見た民の安寧は、五百年の時を超え、今もなお川辺に息づいている。
武田信玄――戦乱の世を超え、未来をも見据えた知将の偉業が、ここにある。

能力名：風林火山
攻撃力、移動速度、防御力をバランスよく強化する。

能力名：信玄堤の守り
水辺の戦闘で圧倒的に有利になる。